総長と女番長 ~ときどきお兄ちゃん~
まずね、家に帰ってきてほしい。一家を支えるため、必死に働いてくれてるのは知ってる。けど、私もお母さんも寂しいんだよー

お兄ちゃんは何も言わない。

家から通える距離でしょ?もっと一緒にいて。二人の食卓は寂しくて味気ない。空気も冷たい。お母さん、毎日、泣いてるんだ。私はそれを知ってる。

今度は反応があった。

なら、条件をつける。まず、あのモヒカン男と付き合いをやめること。
次、真面目になってちゃんと授業受けること。
番長をやめること。この男と関わらないことだ。

って。私はきれてしまった。

ふざけんな!!私はあんたのそーゆうとこがキライなんだよ。私はお兄ちゃんみたいになりたくないの!!
進学校でて、勉強ばっかしてきたお堅い頭になりたくない。計算的に生きたくないのよ!!
結城のことは付き合いやめれないわ。私、彼に惚れてるから!!番長は生徒会の指名だし、私の学校はあんたのような勉強バリバリする進学校と違って、どちらかというと、常に他校と問題が起こるような不良校、私は番長として、学校を守る責任があるわ。 それと…浩紀兄さんを悪く言うのはいくらお兄ちゃんでも許さない。
お兄ちゃんより、お兄ちゃんらしいわ。浩紀兄さんの方が…

と、息を切らしながら捲し立てるように言った。

お兄ちゃんは少し怯んだ。

もうひとおしと思った私は畳み掛けるように、笑いの少ない寂しい食卓にしてるのは自分だって自覚してほしいね!浩紀兄さんとの食事は楽しくて…お母さんも私もずっと笑ってたわよ!!
最近はよく浩紀兄さん来てくれるからお母さんも嬉しそうだしね!

って言ってやった。

効果あるかはわからない。けど、言いたいことははっきり言ったつもりだ。

お兄ちゃんは唸った。

勝算ありとみた。

わかった。そこまで言うなら…飯食うくらいは一緒にしよう。けど、俺らは真逆の性格だから…一緒に過ごすのは合わない。

と、お兄ちゃんは言った。

ほーら、お兄ちゃん負けた。

さあ、帰ろうか。言い過ぎだと思ったけど…案外あっさり聞き入れちゃったのね!
と、浩紀兄さんは言って立ち上がった。私も一緒に立ち上がった。

お兄ちゃんも立ち上がって、俺も一緒に帰るよ。今日はみんなで食事しよう。母さんが笑ってるのが俺にじゃなくて、あんたにてのがかなり不満だけど…家なら話してくれるか?フリーターになった理由…
といった。

まぁ、ええよ。と浩紀兄さんは言った。

私たちは家に向かって3人で歩き出した。

ただいまーと言って家にはいる私たち3人、お帰りなさいーと迎えてくれるお母さん。

ひろくんとお兄ちゃんも一緒なのね!とホントに嬉しそうに笑ったお母さん。

この笑顔が見たくて…毎日お母さんのそばにいる。けど、中々見れないこの笑顔。

久しぶりに見るお母さんの屈託のない、心からの笑顔…

これだけで私は幸せになれる。

私たちは食卓についた。お母さんの作る料理は絶品で…浩紀兄さんとお兄ちゃんは無心で食べ始めた。

そんな様子を私とお母さんは見ながら笑った。

しばらく食べて、落ち着いたのか、お兄ちゃんは浩紀兄さんにフリーターになった理由を聞いた。

あれは、1ヶ月ほど前のことだ。父さんが過労で倒れた。母さんは何年も前に病気で亡くなってから父さんは一人で俺を育てて…俺が就職して間もなかったんだが…家のこと、父さんのことが心配でな、しばらく休暇を取らしてほしいといったらクビにされたんだ。忙しくて、やっすい賃金で働いてたのに…残業も多かったのに…ってなんか腹立ってきて、きっちり辞めてやったんだ

と浩紀兄さんは言った。

お兄ちゃんは複雑そうな顔をしながら、そうか。と一言、深呼吸をひとつして、次の仕事は?と辛そうにいった。
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