俺様当主の花嫁教育
にっこりと美しい笑顔を浮かべる千歳さんから、どうにもブラックな空気を感じた。
思わず聞き返した私に、千歳さんは妖艶に微笑む。


「東和に力を尽くさせて、東和の目を奪えばいいだけよ。それで、最後に志麻ちゃんからぴしゃっと振ってやりなさい。『あんたなんかお呼びじゃないのよ』ってね」


そんな高飛車な囁きを、とてもとても楽し気に私に植え付ける。
つい目を見開いて千歳さんを見つめると、彼女は策士の目をして、ね?と小首を傾げた。


この人……こんなに綺麗なのに、ものすごいひん曲がってて底意地悪い。
さすがに引き気味にはなるけれど、千歳さんの言葉は私にとってもちょっと痛快だった。


日本の茶道界を背負って立つ名門、御影家の嫡男。
血筋的にも見た目にも何の非もない御影さんから特訓を受けて、本物の大和撫子になる。
そうして、私は西郷さんを見返した上に、御影さんをも袖にする。


美しい所作、滲み出る気品。
妖艶な笑みを浮かべた着物美人の私が、御影さんに最強のとどめを刺すんだ。


『御影さんなんて、お呼びじゃないのよ』


――カッコいい。
私のキャラじゃないけど、これだけ散々暴言を浴びた今、ほんと、想像するだけでスカッとする!!
< 42 / 113 >

この作品をシェア

pagetop