俺様当主の花嫁教育
なんとか抵抗を試みるけど、御影さんは昨日までと全く変わらず私の腕を掴んだ。
背後の声は、もうほとんど絶叫と化す。



きゃああ~!じゃないよ、本当に……。
どこまでも艶やかでたおやかな御影さんの所作。
だけど目と手の力は強引で、私を毎夜さんざんな悪夢に誘うのだ。


「み、御影さんっ……」


お願い、今日だけはっ……!と、ほとんど涙目でそう訴えかける。
けれど御影さんは口角を軽く上げて小首を傾げる。


「さ、時間がない」


グッと腕を引き寄せられた。
一瞬足の回転が追い付かずに、前のめりになる。
そんな私の肩を抱くように、御影さんは颯爽と正面ドアに向かって行く。


「か、カッコいい~!!!」


そう騒げる見知らぬ女子社員を心の底から羨ましいと思う。
だって、光源氏なんてただの外面で、御影さんは私の頭上でチッと舌打ちしているのだから。


「……鬱陶しい。俺に手間かけさせるな、志麻」


こんな乱暴な言葉を放つ平安貴公子が実在したなら、日本の歴史は大きく変わる。
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