恋がしたい。ただ恋がしたい。

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バチィィッ!!!


気持ちいいくらいに派手な音を立てて、紫の平手打ちが裕介くんの頬に命中した。


「……っ、痛って…紫ちゃん!何すーー」


突然の仕打ちに声を荒らげた裕介くんだったけど、紫の表情を見た途端に言葉がピタリと止まった。


「『何するんだよ!』って今……言おうとした?」


紫は、ゆっくりと確認するように裕介くんに話かけながら、静かに微笑んでいた。


……だけど笑っているのは口元だけで、目は一つも笑っていないから、その笑顔に妙な迫力を感じてそら恐ろしい。


さっき私に眉を寄せながら怒っていた時よりも何倍も怒りに満ちた微笑みを見て、私まで一緒にゴクリと息を飲んでしまった。



「……してない。」


裕介くんは固まりながらも、すぐに紫の言葉を否定した。


…絶対に『何するんだよ!』って言おうとしてたはずなのに…。


帰って来たと思ったらいきなり叩かれて、普通だったら怒り出してもおかしくない。


けど、紫の弟として27年過ごしてきた経験がものを言っているのか……こんな時には逆らってもムダだって事を、裕介くんはよく分かっている。



「裕介。香織が具合が悪くなったのって、アンタが原因だからね。」
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