小さな恋のメロディ
私と鳴海は婚約はしているけど、お互い特に深い感情もなく、形式上、デートをしているだけみたいなものだったから、あまり喋らなかった。
夜景スポットに着くと、鳴海は車を停めてシートを倒す。
「綾香ちゃんもシート倒せば?たまには楽に行こうよ」
「うん」
私もシートを倒す。
「鳴海さんは何人の人と付き合ってるの?」
「綾香ちゃん、すごいこと聞くな。まぁ、後々面倒になると嫌だから言うけど、今は五人いるよ」
「ふ~ん」
「気になる?」
「全然」
そう言うと、鳴海はつまらなそうな顔をした。
少し沈黙が続くと、鳴海はいきなりキスをする。
「やめて!」
「あ~ぁ、これだからなにも知らないお嬢はつまんないんだよな……」
「……」
「そんなんで俺と結婚できるの?」
鳴海はそう言うと、シートを起こして車を出した。
私もシートを起こし、窓側に逃げるように寄る。
「もうなにもしないよ」
鳴海は少し笑った。
「俺さ、女に拒否られたの初めて。まぁ寄ってくる女なんか、みんな金目当てだけど……。さっき拒否られたとき、ちょっとムカついたけど、こういうのも面白いかもな」