嘘つきな愛の詩
好きな人




「詩(うた)お疲れ、今日も長々と残業ご苦労様」


オフィスチェアに座ったまま

んーっ‼と背伸びをして反り返ると

真上に突然現れた冨樫先輩の笑顔。


「ぅわっ‼お、お疲れ様です‼」


慌てて態勢を直し、チェアごとくるりと先輩に向き直ると、「はい」と温かいココアの入った紙カップを手渡してくれた。


「詩は他の新入りと比べたら真面目だな」


優しく微笑む先輩の笑顔に胸がキュンと高鳴って、思わず視線をそらして俯いた。


「そ、そんなことないです‼私がみんなよりも要領が悪いだけでっ…


みんなは私よりもデキるから残業なんかしなくても定時に帰れちゃうんですよ!


そ、そう!それだけです…っ‼」



そう。

あとはもう一つ。


ちょっとでもいいから

あと1分でも長く

冨樫先輩と同じ場所にいたい。


だけ…なんです。



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