恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~


「澤田くん手大きいね」

「あぁ……怖がりでも男だからな」

「怖がりならわざわざ付き合ってくれなくてもよかったのに……しかも自分から取りに行こうなんて言って……」

「……申し訳ないっす」


がっくり肩を落とすオレに、小林が慌てて首を振る。


「違うよ!……嬉しかったの。

あたしの為に学校に戻ろうって言ってくれたのが、すごく嬉しくて……」


そこまで言った小林は、オレを見て優しく微笑む。

笑顔までもに「ありがとう」って言われてるみたいで、なんだか照れくさい。


オレは縮み込んでいた身体を、気合いを入れて伸ばす。

ありがとう、なんて言われてるのが怖がり男じゃ情けなさすぎる。

シャキッと身体を持ち上げて大きく呼吸して気合いを入れ直した。


……小林に手を引かれながら。




※※※


「よかったな、あって。これで一安心」


不気味な校舎探検のミッションをクリアしたオレは、すがすがしい笑顔を小林に向けた。

そんなオレに、小林がまたクスクス笑う。


「ありがとね。……でも残念。怖がってる澤田くん可愛かったのにな」

「……それはもう忘れてくれ」

「えー、無理だよ」


小林と笑いながら校門を出た時だった。

教員用の駐車場から話し声が聞こえてきて……その声に、小林が反応した。



.
< 79 / 164 >

この作品をシェア

pagetop