愛を運ぶケーキ屋さん

「ねぇ、ハルカワ!」

カウンターで作業をこなしている途中、茜ちゃんの声で私は彼女に視線を合わせた。

すると彼女達は幸せそうに笑い合いながら、まるで秘め事をするかのように小声で話し合いを交わし、こちらを向く。

「私、ハルカワに、この店に出会えて良かったわ」

茜ちゃんが照れたように笑う。

「ハルカワさんが私達に作ってくれたあのケーキ、本当に美味しかった。ハルカワさんがいなかったら、私達は自分の気持ちに素直になれずに茜をいじめてたわ」

梨奈ちゃんが私の目を見ながら、感謝の気持ちを精一杯伝えてくれた。

そのまま彼女達は店を後にし、手を振りながら緩やかな下りを降り始めた所でこちらを振り返った。

「つまり、ありがとう!!あなたとこの店に出会えて良かった!この店は、”愛を運ぶケーキ屋さん”なんだね!」

私は徐々に見えなくなっていく小さな背を最後の最後まで瞳に映す。

嗚呼。
なんて幸せな響きなんだろう。

私は目頭が熱くなるのを感じながら彼女達に深く頭を下げ、こう言ったのだった。

「またのご来店、お待ちしております」







2cake* 「 Mutual aid cake 」 ···end


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