さよなら苺飴




「そうかあ、そういえば正月おまえ見かけなかったもんな」



「家近いんだから普通気づくでしょ」


「いや、俺ひとり暮らししたから」



「へー!!!!何?恋人でもできたの??」



人はどうして聞きたくないことを自ら聞いてしまうんだろう
聞いた後に私はすごく後悔した




「コーヒーと紅茶お持ちしました」



マスターがタイミングよく持ってきて話が途切れた


「・・・ここのお店は相変わらずね、本当」


「ここのお店閉店しちゃうんだけどね」


「え!?!?なんで??」



私は驚きのあまり角砂糖を勢いよく紅茶の中に落としてしまった


「なんか息子が引き継ぐ事になったんだけどボロボロだし心機一転という事で一から作り直そうってことになったんだってさ・・・・・・ほれ」




紙ナプキンを私に差し出す

「ありがと、でもなんか寂しくなるね、このボロさが私は好きだったのになあ」



16歳だった頃の私たちは
いつもここに二人で来ていた
夏休みの宿題をする時も
君に告白された時も
いつもここだった
私にとっては思い出深いお店
今でもあの頃の私たちがここで生きているような気がしていた

「あ、コーヒー無糖で飲めるようになったんだね」


「ああ、そうそう。男はコーヒーは無糖で飲むべき何だってさ」



誰に?なんて聞くのは
野暮なんだろう



「そう、でも確かにそうかもね、そっちの方が男らしいかも」




「最初は苦手で我慢して飲んでたんだけどね」



「馬鹿ね」


そんなその人に嫌われたくないの?
そんなことを聞いてしまいそうになって私は喉まで出てきていた言葉を紅茶で流した




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