セピア‐ため息の行方
  まず早苗がドアをノックすると中から声がして
「はい。どちらさまでしょうか?」
  と花梨の母親と思われる、心持ち声が沈んだ年配の女性の返事が返ってきた。


「あのう私達、花梨さんと同じ会社で一緒に働いている者なのですが、課を代表してお見舞いに伺わせて頂きました茂木早苗と前嶋桃香と言う者なのですが」
  と早苗が言うと中からそっとドアが開けられた。


「こんばんは。会社の方ですか。それはそれはありがとうございます。ちなみに私は花梨の母です。娘がいつもお世話になっております。さあさ取り敢(あ)えず中に入って下さいな」
  とそう言われて二人は中に入った。


  すると早苗と桃香の2人は着ていたコートをドアの入り口で脱いで手に持ち、病室に入るとまずお花とお見舞い金の入った熨斗袋(のしぶくろ)を花梨の母親に手渡した。
< 123 / 291 >

この作品をシェア

pagetop