セピア‐ため息の行方
第4章‐親友の一大事
  松本胡桃(まつもとくるみ)は花梨とは幼馴染であった。お互いの家が近かかったので二人は同じ幼稚園に通い、小・中・高と同じ学校で学んだ。なので幼い頃から気心の知れた間柄でしかも親友同士である。だが17歳の春に急遽(きゅうきょ)父親の転勤で花梨は東京に行く事が決まり、高校生半ばになって花梨は転校を余儀なくされてしまった。なので地元から東京に家族揃って上京をする事になったのだ。


  花梨の曾おじいちゃんは若い頃から船乗りをしていたのだけれど、花梨が中学生になった頃位に陸上勤務になり、仕事の関係で東京に行く事が決まった。そんな曾おじいちゃんは早くに妻に先立たれていた為、ずっと東京で一人男寡(やもめ)暮らしをしていた。ちなみに曾おじいちゃんは母方の父親である。


  そのおじいちゃんもだいぶ高齢になっていたので、絶えず心配をしていた花梨の母親である有莉禾は、東京での曾おじいちゃんとの同居を家族全員に提案した。その時曾おじいちゃんが大好きだった孫である花梨と啓太の二人は即曾おじいちゃんとの同居に賛成をした。でもって残る有莉禾の夫である靖嗣も勿論この事には賛成だった。こうして難なく花梨親子は東京で曾おじいちゃんとの同居が決まったのだ。


  倉橋家は所謂(いわゆる)典型的なマスオさん家庭である。が、しかしちなみに有莉禾の夫である靖嗣は婿養子なので母方の倉橋の姓を受け継いでいた……。
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