セピア‐ため息の行方
  早朝の7時半である。幸いにもその時他に車は通っていなかった。が、しかし今日は土曜日であるせいかあたりには人がまばらではあったが、通勤途中の野次馬が次第にわらわらと峻甫の回りに集まって来た。


  峻甫は慌ててトラックの運転席から降りて倒れているその女性の元へと急いだ。


「おい君大丈夫かい?し・しっかりしてくれ!!!」
  と峻甫はその女性に声をかけたがまるで反応がなかった。


  すると野次馬の中の一人が叫んだ。


「電話だ!急いで電話で救急車を呼んでくれ!」
  すると若い男の人がケータイで119番の番号を押して救急車を呼んでくれた。


『し・死んでしまっていたらどうしょう?!』と一時は焦ってしまった峻甫だったが、徐徐に冷静さを取り戻していった。取り敢(あ)えずまずは見ず知らずの人が救急車を呼んでくれたので、今度は自分で警察に電話をしようと左上のポケットに入れていたケータイを取り出した。


  だが指が硬直して中々思うようには番号を押す事が出来なかった。それでもゆっくりながら峻甫は警察に連絡をするために110の番号を押した。
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