【完】36℃の思い〜世界で1番大切なキミへ〜


「眠ってるわよ。ちょっと待ってね、今起こすから」



「いや!!...大丈夫です...」



咄嗟に出た声が意外にも大きかった。

そしてその声が原因で、カーテンの閉まっているベッドの方から声がした。



「...んん......保健室...?」



やばい、やばい、やばい。



「あ、お、俺は鞄届けに来ただけなんで!それじゃ」



俺は慌てて保健室から飛び出した。



ドクン、ドクン──



心臓が煩い。



「...はぁ...ビックリした...」



安心したのもつかの間、保健室の方からドアが開く音が聞こえた。

しかも走っている足音も聞こえる。



多分...未菜だ。



俺は咄嗟に物陰に隠れた。

息を潜めて隠れていれば、次第に足音はどんどん大きくなり近づいてくる。



ドクン、ドクン──



その足音は俺のそばで止まった...



バレ...た?



「......須藤...先輩......どこ...」



未菜はポツリと言葉を零した。



俺のことを探しているのに、すぐそばにいるのに、俺は未菜の前に姿を現すことが出来ない。

そんな状況に、ただただ拳を強く握りしめるしかなかった。

< 195 / 254 >

この作品をシェア

pagetop