Returns *リターンズ*

最初は特に意識なんてしていなかった。

たまたま視界に入ってきただけだった。



高2の春。



廊下にいる女子たちが、中を伺いながら

キャーキャー言ってるのは日常茶飯事だけど、

彼女はそれと違った。



あ、また今日もいた。



何度か見かけるようになり、今日はしばらく

彼女の観察をしてみた。


彼女の友達らしき子が、一緒に教室内に

入るように誘っているようだけど、

首を振ってがんとして入らない。


ボ───ッと立ってるだけだと思ったら、

どこかに視線が釘付けになり、

小さな悲鳴をあげている。


虫かなんかを見つけたようだ。



ぷぷっっ



その姿があまりに滑稽で、

思わず吹いてしまった。


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