嘘と本音と建前と。
空知の懸命さを見ていると自分がどちら側の人間かを忘れて

しまいそうになる。


「ほなね、司先輩。」


顔を上げると前かがみになって首を傾けている香織がいた。


「ああ。」


短く返事をしたものの手は振らない。


車内から消える範囲まで香織を見送るがホームへ降り立つところからは

本を開いたため見ようともしなかった。


香織とは長い時間隣同士になって話さなくても気まずくならない

数少ない人だ。


友人というのとは違う気がするから人と言っておく。


司は改札をくぐり抜け、駅の外へと出た。


学校の最寄り駅ののどかさとは違う静けさがある。


最寄り駅から家は徒歩10分もない近場だ。


車内と外の寒暖差は激しく早足で家路を急いだ。


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