嘘と本音と建前と。
「いえ、全然大丈夫です。」


教室に入ってきたのは紛れもなく香織だった。


こう思うとつくづく空知の運を哀れんでしまう。


司は前を向き直り、再び頬杖をついて冷静なふりを装う。


やたらと司の心臓の音が早い。


司は机に掘られた穴をじっと見つめていた。


「今日集まってもらったのは1週間後の選挙に立候補する生徒の

決意表明の貼り出しを頼む為だ。各クラスプリントを取り次第解散とする。」


先生の発言後、司は立ち上がりプリントを1枚取って流れるように

教室を出た。


出口から教室をそっと覗くと香織も誰かと群れることはせず、

真っ直ぐプリントへ向かっていた。


司は香織に追いつかれまいと足早と自分のクラスへと向かった。


相手が司のことを意識している訳では無いし、

自分も香織を意識している訳でも無い。


クラスに飛び込むように入り、後方の黒板に掲示物を貼り付けてから

その近くにある空知の机に突っ伏す。


< 91 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop