恋する僕らのひみつ。



「湊くんも、結雨ちゃんのこと大切に想ってるんだよ」



優しく微笑む奈乃に、あたしは寂しげに笑って答える。



「……幼なじみとしてだけどね」



「本当にそれだけかな?」



「それだけだよ……」



昨日だって、湊にハッキリと言われた。



“……彼氏のフリしなくていいと思ったら、せいせいする?”

“あたりめーだろ”



あたしだけが。



あたしだけが、恋してる。



「好きな気持ち、湊に気づかれたらどぉしよ……」



「このまま隠していくつもりでいるの?」



「そうするしかないから」



失いたくない。



いまの湊との関係も、距離も。



だけど、一緒にいる時間が多すぎて。



好きな気持ちが、あふれだしてしまいそうで。



本当はすごく怖かった。



幼なじみとしてなら、そばにいられる。



このまま湊のそばにいたいなら、気持ちを隠し通していくしかない。



そう自分に言い聞かせるしかなかった。



「そうするしかないってわかってるのに……それでも、ちょっとしたことで揺れ動いちゃう自分がいて……」



声が震えて、涙がこみあげてくる。



「結雨ちゃん……。恋してるんだもん。揺れ動いて当然だよ」



「湊への気持ち、どうしたら消えるのかな……」



いまにも泣き出しそうなあたしを、奈乃はそっと優しく抱き締めてくれた。
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