【完】『ふりさけみれば』

3 すみれの園


土曜日の東京駅は、雨音がアナウンスをかき消してしまうほどのどしゃ降りであった。

そのせいか。

新幹線は徐行がかかって、少しダイヤが乱れ気味の様相である。

「こんなんじゃ間に合わないよ」

みなみは空を恨めしそうに仰いで、少しべそをかきそうになっていた。

そこへ。

「橘さん」

みなみは振り向いた。



< 18 / 323 >

この作品をシェア

pagetop