【完】『ふりさけみれば』

いずれにせよ。

関西の人間ではないらしいことだけは、確かなようであった。

(関西人じゃなかったんだ)

まず。

みなみはそこに驚いた。

なぜなら。

当の一慶は京言葉を操り、生粋の京都人のはずの力でさえ、

──あいつ、俺より京都人らしいんちゃうかな。

とみなみに話したことがあるほど、今ではすっかり京都に馴染んでしまっているのである。

なので。

みなみも、彩も、一緒に一慶と仕事をしたことがある秋月しおんですらも、一慶は関西生まれだと思い込んでいたらしい。

「まぁ二十年近く京都におったら、嫌でも染まるんか分からんけどな」

と一慶は、どこまでが本音だか冗句だか分からないようなことをいって、煙に巻いたりする。



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