奏で桜
「どうして?」


「どうしてって…、
〝あんなこと〟があったのに、
何も聞かずに、黙って
素性の知れない相手を泊めるだなんて…

私には考えられないから…。」


そう、自分から
閉ざされた話題についてである。
あまり話したくはなかったのだけれど、
この際、仕方がないと考えたからだ。
しかし、彼女は…



「ふふっ。
…ティアナちゃんが素性の知れない
相手なの??」


と、可笑しそうに笑った。
彼女は冗談を言っているのだと勘違い
しているようだった。
やむなく、私は少し強い口調で
喋り出すことにした。


「…ヒイロ。私は冗談で話をしている
わけじゃないのよ。
真面目に聞いてくれないかしら?

だいたい貴女…、私が怖くないの?
恐ろしくないの?

私はあの時…」



私は〝あの時〟の後を上手く
説明できなかった。
いや、そこから先の言葉を詰まらせたと
言った方が正しいのかもしれない…。
< 136 / 169 >

この作品をシェア

pagetop