奏で桜
「…というわけなの。」


私が話し終えると、
彼女はきょとん、とした顔で
こちらを見ていた。



「…それって、アルトくんがって、
こと?」


「そうよ。 アルが私に外に出るなと
言っているの。」


「…そうだったんだ。」


「…アルは私のことを本当に
心配しているからこそ、この部屋から
出さないようにしているの。
それは私にもよくわかるんだけれど、
私の心情的には、外に出て、可能なら
自由に歩き回りたいと思っているわ。
だって、もうずっとこの部屋から
出ていないのよ?
辛抱強い私だからこそ、
耐えることができているけど、
普通の人間だったらこんな狭い部屋に
ほとんど一人で暮らしてたら
気が狂ってしまうわよ。
私だって、もうほとんど
限界なのに…。」
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