奏で桜
憤っている時には怒り、
嬉しい時には笑い、
悲しいときには泣く。




これがヒトの当たり前と呼ばれる
感情なわけだが、僕たちは
上手くこれを扱うことが出来ない。

勿論、最初の頃は誰しもが出来るの
かもしれない。
しかし、年をとるごとに
少しずつ歯車は狂い、
絡まり、そして錆び付いていくのだ。
僕がそうであるかのように…。
僕の周りの人間がそうであったか
のように…。

だからこそ、彼女の裏表のない感情が
僕にとって人間よりも人間らしさを
感じたのだろう。

少なくともこの頃の僕は、
彼女の表情に好印象をもてた。


しかし…だ。
最近の彼女は、その類い稀ない
長所を失いかけていたのだった。
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