奏で桜
「…馬鹿ね。 ……ほんとばか…。

…本当に大馬鹿ものよ…。
あなた…。」




彼女は、〝馬鹿だ馬鹿だ〟と罵った。


不思議なことに僕はその罵り方が
嫌いではなかった。


彼女の〝馬鹿〟はいつも優しい。
そんな気がするからだ。





彼女は僕をきつく抱きしめ、
ようやく涙を流してくれた。



それは紛れもなく〝彼女〟であった。
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