イケメン御曹司に独占されてます
コンシェルジュと言われる人が持ってきてくれた部屋着や下着をいわれるままにお借りして、その後はルームサービスで食事をして……。
結局パーティでは何も食べていなかったから、とても有難かったけれど、さっきまでの色んなことをまるで無かったことのように振舞う池永さんにまた混乱して……。


疲れたからと部屋に引きこもってしまった池永さんを見送って、私もベッドに早々に潜り込んだのだけれど。


大きなベッドが二つ並んだ、広すぎる部屋。
最上階の一面のガラス窓には、二十四時間眠らない東京の夜景が静かに瞬いている。
東京へ出てきてからずっと一人暮らしをしているとはいえ、こんな部屋でひとりで眠ることに、少し気後れしていたのかもしれない。
なんだかとても心細くて、だからあんな夢を……。


一旦寝室から出て行った池永さんが、水の入ったグラスを持ってまた帰ってきた。
首の後ろに手をあてて、コップの淵を唇につけて水を飲ませてくれる。


少し落ち着いた息で、ありがとうを言おうとしたけど、まだうまく言えなかった。

ベッドサイドにグラスを置いた池永さんが、そっとマットレスに腰掛けて私の肩を抱く。


「怖い夢でも見た?」
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