イケメン御曹司に独占されてます
そんな会話のあと日曜日に迎えにくると言って帰っていった池永さんは、その言葉通りに今朝十時ごろにはうちにやってきて、ここへ連れてこられたのだ。

郊外に向かってしばらく車を走らせると、やがて閑静な高級住宅街へとたどり着く。
その中でも一際大きな塀に囲まれた家の前で一旦止まり、リモコン操作で鉄製の門を開けると、エントランスと呼ぶには長すぎる坂道を上る。


そしてようやく見えてきた荘厳な建物の玄関前に降ろされ、池永さんが駐車スペースまで車を置きに行っている間、手持ち無沙汰に立派な大理石の天使と見つめ合う。

やがて車から戻ってきた池永さんが玄関のベルを鳴らすと、待ち構えたように玄関のドアから出てきた会長に、満面の笑みで出迎えられた。


「今日はわざわざごめんなさいね。さ、早く入ってちょうだい。ランチはお昼からだから、まだ少し時間があるわね。あぁそうだ。秀明、あなたのお部屋で待って頂いたら。お茶でも持っていきましょうか? ……まぁ、余計な邪魔は必要ないわね。ほほほ」


「……」


仏頂面で黙り込む池永さんを横目に、私は緊張しながら会長に頭を下げた。
< 138 / 271 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop