イケメン御曹司に独占されてます
「そんなに引っ張ったら痛いです! 一体どこへ……」


源兄ちゃんの家まで戻ってきたのに、玄関には向かわず庭先に停めてあった池永さんの車の助手席に押し込められて、無理やりシートベルトをさせられる。


「え!? 源兄ちゃんに挨拶しないと……」


「いいんだ。源なら俺の気持ちをきっと分かってくれる」


エンジンをかけてハンドルを切る横顔は、甘く微笑んでいる。


「……何処へ行くの?」


「ふたりきりになれるところ。だけどこないだみたいな毒々しい場所は、もう絶対にゴメンだ」


こないだの毒々しい場所!? えっ!? それって……。


「い、池永さん、いきなりそれは、いくらなんでも……。あの、心の準備ってもんもありますし」


慌てふためく私に、チラリと向けられた瞳は、薄い茶色がかった黄緑色。


「俺はもう十分待った。……眠り姫にはあとでちゃんと呪いを解く魔法をかけるから、安心しろ」


そう微笑んで重ねられた指が、私の手を包む。


「お前は中々引き合いが多そうだから、こういう場合は先手必勝だ。売り先は早めに決めておいた方がいい」


仕事が早いのも、秀明の秀明たる所以だった。




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