イケメン御曹司に独占されてます
「どうして、あなたがそのことを……」


知ってるんですか、という言葉は続けられなかった。
岡田さんの唇が私のそれに触れそうなほど近づいたからだ。


思い切り目を見張った私が、岡田さんの綺麗な瞳に写る。
黄土色?
黄緑?
その瞬間、沸き起こった予感に体が震える。



「……ターくん、なの?」



私の言葉を聞いた岡田さんの目が優しく細められて、唇が近づく。
決して緩まない腕の力に、体中の力が抜けていく。
誘われるように――まぶたを閉じた。



あなたは——。




「拓也!! なにしてる!?」



私と岡田さんの間に、突然強引に割り込んできた背の高いスーツ姿の人影は、弾かれたように突き飛ばされた岡田さんを、そのまま壁に押し付ける。



「お前……一体、なんのつもりだ!!」



怒りに震える声。苦しげな瞳。

こんな池永さんを、私は知らない。



「……なんだ……もうちょっとだったのに」



茶化したように笑う岡田さんの瞳も、強い色に滲んで。


そんなふたりに為すすべもなく、私はしばらくその場に座り込んだまま、動けないでいた。




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