お隣さんはイケボなあなた

「そっか、元気ないんだ?」

「そう、元気ないんです。あたし」


そう答えると、彼はクスっと笑う。

ちょっとだけ胸の中が、穏やかで温かくなった気がする。

矢嶋さんの笑顔のおかげかな。

千紗は、暗い中、目を細めて彼を見つめた。


「じゃあ、今度の土曜、僕とどこか出かけようか」


彼の言葉の意味を理解できるまでに、数秒かかる。


「えっ……?」


思わず声が裏返ってしまう。

今、彼はなんて言ったの?

自分の耳を疑いそうになる。

彼はもう一度、顔を覗かせて言った。


「僕とデートしよう」


キラキラした夜景をバックに、にっこり笑いながら。

 
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