流れ星に4回目の願いを呟く時。
 確かに、父も母も、まさか苦労と天塩を掛けて育てた1人娘が、嫁入り前に何処ぞの寒い所へフラフラと飛び立っていくなんて、思ってもみなかったことだろう。


 でも、そう決めつけいたとしたら、どうかとも思う。


 確かに『蛍』は夏の風物詩。蜚蠊に比べれば随分と人々の待遇は良く、蝉に比べればお行儀も良い。言うこと無しのお利口さん。


 しかし、私もそうだとは限らない。


 初対面の人は勿論、学校の先生も近所のおばさんもみんな、私の名前が蛍であることを良いことに「夏になると元気よね。」だとか「明るくて良いわね。」と言っていたが、果たしてそうであるか。

それは常に的を得ていなかったはすだ。


 夏はクーラーが無いと直ぐにバテたし、外で遊ぶよりは教室で絵本を読むほうが好きな子どもだった。




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