流れ星に４回目の願いを呟く時。
「そうそう。再来週にはクリスマスです。各組の先生方、クリスマス会の準備は進んでいますか。」


　この時期、夕方の職員会議の議題はクリスマスのことが中心になる。クリスマス会は園での大きなイベントの１つで、子どもたちはもちろん、親御さんもとても楽しみにしている。


　会議が終わり、日が沈み始めた町を帰りのバスに揺られながら眺めていると、ふと園長の言葉が思い出された。頑張って悩む。保育士になって2度目のクリスマスが来ようとしている。若い年頃の乙女が苦悩の聖誕祭を迎えようとしているのだ。


　それでも、悩み苦しむ年があっても良いはずだ。イエスの誕生を世界中が祝福する中、意外に聖母マリアが味わった出産の苦しみへの労りはフォーカスされない。それに比べれば同じ女として、まだまだ弱音を吐ける立場では無い。


　夜の町を歩く。家まではバス停から歩いて５分ほどの安アパート。家の手前の横断歩道の信号が点滅を始め、急ごうと思ったが、足が止まった。


　手袋をしてない手は一段と冷える。口に当てて、はあっと息をかけようとしたが、たまらずポケットに手を入れた。カイロの方に手を入れたつもりだったが、ハズレだったらしい。


　カバーケースを失くしたiphoneは酷く冷たくなっていて、母親と友人からのライン通知が何件か来ていた。


　息を止めた月が見下ろす。３回くらい、いや、やはり急ごう。信号が変わるのを確認して、一気にアパートに向かった。


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