私の小さな願い事

裏切り者

~土方歳三~



原田の家が見廻り組に、荒らされた

おまさと子は、泣きじゃくり

部屋の中は、めちゃくちゃ

依里は、うまく逃げたようだ



「うちの原田が何かしましたか?」

「人を匿っていると聞いてな」

「ほぉ~ で?いたのか?」

「いや……おらぬ」

「では、この責任は、どなたに?」

「ふん!仕事なのだ!いちいち頭を下げられるか!!!」


ぞろぞろと帰って行った


「土方さん!!突然で、怖かったわ!!
依里にお金も持たせられなくて…
ごめんなさい!!!」

「おまさ、すまなかった
原田!明日は、非番にする
おまさのそばにいてやれ!!」

「ありがとう
土方さん… 何でバレたんだ?」

「さぁな… 依里がうまく逃げてくれて良かった……少しでも姿を見られてたら
ヤバかったな……原田、すまん」

「俺んち皆、無事だから、気にすんな!
それよか、依里をさがさねぇとな」

「あぁ……だが…あてがねぇ」





俺がつけられたのか?

それとも……


幹部の誰かが


密告?



はぁ~ 密告だろうなぁ




山崎から、報告があがっている

伊東さんが、ちょろちょろしてるって


平助をつついて

聞き出したんだろう



屯所に戻ると、平助が真っ青だった

わかりやすい奴


「平助!こい!」

無言で俺の後を歩き

部屋に入る


「まぁ、座れ」

「左之の家、大丈夫だった?」

「あぁ、だがな
一歩間違えば、新選組が責任を問われることになっただろうな
依里は、殺され
原田一家も、打ち首
新選組は、全員、切腹だったろうな」


「伊東さんに… 相談したんだ
何か、良い案がないかなって
まさか…… 密告するなんて……
すみませんでした」


「伊東さんは、元々…信用してねぇ
だがな、お前のことは、信用している
次、こんなことしたら、総司に斬られるぞ
次は、ないからな」

「すみません」

「今回は、俺が後をつけられたことにする
平助……反省しろよ!
二度と、裏切るなよ!?」


「はい」



難しいことを言ったと思う

平助にとって伊東さんとの関係は

依里と俺の関係と同じだから


こちらも、あちらも裏切れない


依里は、人間関係は器用だった


人一倍、気も使い

人を思いやる

素直だった




平助も素直だ




その素直さが、こうしてつけ込まれる


いつか、伊東さんのせいで

平助が依里みたいに追いつめられたら



守ってやらなければな






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