私の小さな願い事
明治 元年 夏

江戸へ

体調の良すぎること…

目も耳も、悪いなりに良い


木戸さんが婚礼の為、幾松さんとこちらに
帰ってくるという文が届いて、数日



「ご主人… 私、懐妊したかも…」





慶太郎の時も、優里の時も
つわりが酷かった

歳三の子供は、産まれる前から歳三に似て
私を守ってくれているのね



旅籠のご主人は、本当にいい人

すぐに産婆さんを紹介してくれて

今日一日で、ずいぶんと支度ができた

近所の人から、おさがりを貰ったり







「どうした?何の騒ぎだ?」

「木戸さん!!おかえりなさい!!
あっ!幾松さん!!お久しぶり!!
遠藤さんもご一緒でしたか!」

「で?一体どうした?」

「実は……私」

「おめでとう!!依里ちゃん!」


まだ、何も言ってないけど
幾松さんには、わかったのね


「木戸さん… ごめんなさい
内緒で会いに行っちゃった…
それで…お子が……」

「そうか!!それは、めでたい!!」



桂さんから、木戸さんになっても
変わらない

怒るどころか、喜んでくれた


だだひとり



「誰です!?桃さん!!どうして!!
ああーーーー桃さんがぁーーーー」


遠藤さんは、絶叫していた



誰って……


土方歳三だなんて、言ったら


それこそ、大絶叫ね




「桃とは、結ばれぬ縁の持ち主だ」


木戸さんの助け船で、どうにか遠藤さんが
黙ってくれた


わかっているけど

言葉にして、結ばれぬ縁と言われると

しょんぼりしちゃう




「桃さん!! 俺がその子の父親になっては、駄目ですか?」

「え? 遠藤さんが?
ムリムリ!!駄目ですよ!!!
そんな、同情していただかなくて
結構です!!!」

「同情…?桃さんに好意を寄せていること
お気づきでない?」

「え? 誰が?」

「遠藤 桃は、バカだから
もっとゆっくり時をかけてわからせろ
高杉なんて、可哀想なものだった」

「は?木戸さん?バカとは、失礼です!」




木戸さんと幾松さんの婚礼は、とても素敵だった



「桃さん… 大阪に来て下さい」 


ああ、天子様のお引っ越しの件ね


「いいですよ!」

「いいんですか!!やったぁ!!」

「どうして、遠藤さんがそんなに喜ぶの?
睦仁様の護衛の件でしょ?」

「…………はい」

やけに長い間があったけど?




懐妊中とはいえ、体調が良い

今なら、江戸までいける










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