私の小さな願い事

根性

夕餉にくると言っていた多津が

昼過ぎに

私にお水を持ってきてくれた


ガシャーーーン


でも、見事に落とした


「御髪が…… なんと……」


本当に今日は、体調が良い

良く聞こえた

でも、聞こえない、見えないふりをした


「多津?何か落としたの?」


割れた水入れも、湯呑みもほったらかしにして、私の所へ


〝どうしたのですか〟


「暑いから、切ったの!
とっても涼しいわ!!」


にっこり笑って見せる


だけど、多津は悲しそう


ずっと前に見た


優もこんな悲しい表情をしてたな



「もう、夕餉?」


とぼける


〝あついのでおみずをおもちしました〟


「ありがとう!!私は、大丈夫よ!!
早く、あちらのおそばにいてあげて!!」


〝おとしたのでいれかえます〟

「あら?その響きだったのね
怪我をしないでね
お水は、入れかえなくていいわ
夕餉まで、横になるから」

多津が、先ほど敷いた布団を見て

〝よりさまがしいたの〟


「布団?
……多津の負担になりたくないから
できることは、しないとね!!
多津… 
出産の時は、よろしくお願いしますね」

〝もちろんです〟



慶喜様が来なくなり


私には、多津しかいない

でも、ひとりでいいの



もう、諦めたから










< 97 / 153 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop