恋の相手は強引上司
「恋実」

バックヤードで納品された商品を箱から出していると

後ろから名前を呼ばれた。

「課長・・・・会社で下の名前を呼ぶのはやめてくれませんか?」

振り向きもせず商品を見ながら答えると一馬は壁に片側だけもたれ掛け

腕を組んで私を見下ろしていた。


「すみませんね…つい癖で。ところで明日なんだけどー」

「知ってる。無理なんでしょ?名取から今さっき聞いた」

「・・・・・ごめんな」

こればっかりは仕事だから仕方がないよ・・・

本当はさっきの事も話したかったんだけど

「課長、見てないで手伝ってくださいよ。フィルムってかさばるし
剥がすの面倒なんですから」

一馬はハッとするも私の横に立って手伝ってくれた。

「今日はなるべく早く帰るようにするよ。もうすぐプチ同棲も終わっちゃうしね」

「・・・・・期待してませんよ~~」

あ~あ、ちょっと前までは一人が大好きだったのに・・・・

「真壁さん?」

「はい」

「・・・・なんか売り場で問題でも?」

急に仕事モードに切り替わったから顔をあげると私たちの後ろを社員が通って行った。

「…別に何もありませんが」

「・・・そう・・か」

私顔に出てたかな。

でもここじゃ・・・話せないし

やっぱり帰ったら話そうかな

「あのー」

今日話したいことがあると言おうとしたのだが

誰かが一馬を呼んだ。

どうやら他所の部の偉い人だ。

急に難しい顔で話し出すから私は言葉を飲み込み

取り出した商品を抱えて売り場へと戻った。
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