君と、美味しい毎日を
12.ビール
「はぁー!? プロポーズって誰が?誰に?何のために?」

「俺が、瑶に。 プロポーズなんだから、結婚するためじゃない? 」


ちょうど就業時間が終わるころ、珍しく久我原の方から電話があって飲みに行こうと誘われた。

俺達は互いの職場の中間地点になる新宿で待ち合わせし、適当な居酒屋に入った。

ちなみに、まだ最初の一杯も飲み終わっていないから俺は全然酔えていない。


「ちょっと待て。
お前らいつから付き合ってたんだよ?
なんで俺に内緒にすんだよっ」

「内緒もなにも、一度も付き合ってないし」

「はぁ!? じゃ、お前付き合ってもないのにいきなりプロポーズしたのか?」

「そうなるな」

「瑶ちゃんは、なんて?」

「まだ保留」

「ほら、見ろ!
そりゃね、お前は瑶ちゃん大好きだからいいだろうけど、瑶ちゃんの方は順を追って欲しいんじゃないの? 女の子なんだしさぁ」

彼女は作らない主義だった友人の突然の方向転換に俺は困惑気味だ。

いや、ある意味で主義を貫いてるとも言えるのか!?


久我原は社会人になってますます洗練された美しい顔でさらりと言ってのけた。

「俺が瑶を好きなのと同じくらい、瑶も俺を好きだからいいんだよ。
俺としてはもう十分過ぎるくらいに待ったつもりだしね」

「・・・もしかして、のろけ話のために俺を呼び出したわけ?」

「正解。 いまごろ、気づいた?」

その笑顔があんまり幸せそうで、
なんだか俺まで幸せな気持ちになる。

「しゃあないな〜。
今日は付き合ってやるよ。 お前の長い長い片思いの成就を俺の奢りで祝ってやる
!! 好きなだけ、飲め!!」

久我原は遠慮なくビールをガンガン頼み、俺達は大学時代に戻ったようにハイペースでグラスを空けていった。


駅から自宅までの道のりで、ふと思い立って携帯の発信ボタンを押した。

こんな時間に常識知らずだけど、俺はかなり酔っ払ってるしきっと許されるはずだ。































































































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