イジワル社長と偽恋契約
私を疑うような眼差しで見つめ、目を細める旭さんに私は慌てて答えた。





「違いますよ!」

「怪しいな…」


もう一度強く否定した後で私は朝食の準備を始めた。

期待していたラブな展開なんて、そう簡単に起きるはずないんだと悟った。







「仕度出来ました?」

「ああ…」


旭さんの朝食が終わりスーツに着替えると、私達は玄関で靴を履いて外に出る。

彼にお弁当を作るようになってから毎日一緒に出勤していて、これがもう当たり前になっていた。


私は旭さんの秘書件、家政婦、雑用、世話役みたいな役割だ。

大変だけど彼のそばにいられるのなら苦ではない。






「今日のスケジュールは?」

「朝はメールチェックと資料の整理です。午後からはY社との会議で多分長時間になると思いますので、午前中は緩くしました」

「…合格だ」


旭さんに褒められて嬉しくなっていると、待っていたエレベーターが来て扉が開く。

2人で乗り込んでボタンを押すと扉がゆっくりと閉まる。






「…もうすぐ年末だが…いつも正月はどうしてるんだ?」


エレベーターが下る中で旭さんが私にそう聞いて来た。





「私はいつも実家に帰ります。31日~3日くらいまでですが」

「そうか」

「…社長は?」

「俺もそんな所だ」


そういえば旭さんの実家ってどこなんだろう?

聞いたことなかったな…


やっぱりまだまだ知らないところだらけ…






ガコンッ……


「きゃっ!」




その時…突然エレベーター内が大きく揺れて、まだ1階に着いてないというのに止まった。





「なにこれっ!?どーしたんでしょう」

「故障か?」

「えっ!?」
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