リワインドの神は虚しき骸にして愚かなる人間。
***
 ――そして、夜中。

「ぐぶふっ」

 胸に冷たい衝撃と喉をせり上がってくる熱い液体に目を覚ました。

「がっ、ぐ……ぇみ……」

 限界まで見開いた瞳に映ったのは、オレの腹の上にまたがる彼女の姿と、彼女がオレの胸から引き抜いた包丁だった。

「ごめんね、修ちゃん」

 再び振り下ろされた包丁はオレの喉を突き刺し、痛みや苦しさに頭の中が真っ白になる。
 それでも五感は全てを感じ取っていた。

 彼女が流す涙。
 自分が刺される音。
 気管に流れ込む血液。
 自分の血の臭い。
 吐き気がする味。

「修ちゃんは、私だけのものよ。誰にもあげないんだから。私だけを見て、私だけのものになって、修ちゃん!」

 彼女がここまでオレを愛し思いつめていたとは……また振り下ろされる包丁を眺めながら、思う。
 ダンプカーの次は、婚約者か――――そして、夜中。

「ぐぶふっ」

 胸に冷たい衝撃と喉をせり上がってくる熱い液体に目を覚ました。

「がっ、ぐ……」

 目を覚ますと同時に、オレへの謝罪を口にしながらも包丁を振り下ろそうとする彼女の姿をとらえる。
 彼女の凶刃を受け止めようと手を持ち上げるが、胸に穴が開いた体は思うように動かなかった。
 彼女の刃は腕を掠めて予定通りオレの喉へ――――そして、夜中。

「ぐぶふっ」

 胸に冷たい衝撃と喉をせり上がってくる熱い液体に目を覚ました。

「がっ、ぐ……待」

「ごめんね、修ちゃん」

 彼女はオレの声を無視して予定通り――――そして、夜中。

「ぐぶふっ」

 胸に冷たい衝撃と喉をせり上がってくる熱い液体に目を覚ました。

「がっ、ぐ……」

 目を覚ますと同時に、オレへの謝罪を口にしながらも包丁を振り下ろそうとする彼女の姿をとらえる。
 彼女の凶刃を受け止めようと手を持ち上げ、今度は上手いこと凶刃を受け止める。
 が、手のひらに刺さった刃はすぐに引き抜かれ、今度は腹に――――そして、夜中。

 彼女はオレを殺す。
 何度も何度も包丁を突き刺し、オレを殺す。
 オレの目を真っ直ぐに見て、涙を流し、オレへの謝罪と愛を囁きながら、何度も何度も何度やり直しても繰り返してもオレを殺し続けた。

「ごめんね、修ちゃん。修ちゃんは、私だけのものよ。誰にもあげないんだから。私だけを見て、私だけのものになって、修ちゃん! 愛してる! 大好きだよ、修ちゃん! 修ちゃん! 愛してる愛してる愛してるめちゃめちゃ大好き超愛してる!」


「だから、」


 ――そして、夜中。――そして、夜中。――そして、――そして、――そして、――そして、――夜中。――夜中。――夜中。――夜中。――。――。――。
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