王子様はハチミツ色の嘘をつく
「きみとのことが遊びだなんて、どこをどう解釈したらそんな答えに辿りつくのかわかりませんけど……まあいいでしょう。言葉でわからないなら、教えてあげます」
「え……? 社ちょ、ン―――ッ!」
突然降ってきたのは、社長の強引なキス。
私の思考は一瞬ショートして、抵抗することすら思いつかず、身体は硬直してしまう。
だって……これが私のファーストキスなのだ。
二十八年間、誰とどんな状況で交わすことになるのだろうと、胸をわくわくさせて待っていたのに、こんな……。
「……美都」
一度ゆっくり離れて行った彼の唇が、至近距離のままで私の名を呼ぶ。
頭がぽうっとして、苦しいのに、どこか甘さも含んだ濃密なため息をこぼした私は、彼をにらむように見つめる。
「こういうときは目を閉じるようにと、昨夜教えたばかりですよ?」
余裕しゃくしゃくの態度で私を見据え、社長がそう言った。
そ、そんなこと言われたって“こういうとき”っていうのは予測不能だから、目を閉じる余裕なんて……っていうか、今の問題はそこじゃない!
「どうして、キスなんて……っ」
不覚にも、ドキドキしていることは認める。でも、本当に彼はドキドキしていい相手なの……?
「言葉の代わりだと言ったでしょう」
「……だから。その意味がわからないんです」
眉を八の字にして主張すると、社長が苦笑する。