王子様はハチミツ色の嘘をつく
第三章 

社長の立場



社長秘書生活、二日目。

昨日倒れるように早く寝てしまったせいか、朝はわりと時間に余裕があった。

朝食を済ませてからクローゼットを開けて散々悩んだ私が選んだのは、黒とグレーの地味な切り替えワンピース。

昨日着ていたものに比べたら華やかさはないけれど、無難だとは思う。

むしろ、無難な私には無難なもののほうが似合うのだ。昨日の服は着せられた感が拭えなかったし。

鏡の前でウン、と頷いて他の支度も済ませると、私は自宅マンションを後にした。





指定された九時よりも十分ほど早く着いた秘書課には、すでに涼子さんと深見さん、それから二人の秘書課員がいた。

私の姿に気付いた涼子さんがすぐに、昨日はバタバタして紹介できなかったよね、と気を利かせて、私を他の秘書の方々に紹介してくれた。


「……地味ねぇ。可愛いのにもったいない」


この課で一番年長者らしい、三十代後半の先輩、笹野すみれさんが腰をデスクにもたれさせ、品定めするように私を見た後で、ぼそりとこぼす。

長い髪をスッキリとアップにした彼女は、明るいベージュのパンツスーツを着こなしていて、シンプルなのに私にはないスタイリッシュさがある。


「何が足りないんだろう……あ、私のアクセでよかったら貸しましょうか!」


丸くてふんわりとしたショートヘアが似合い、小柄でほんわかした雰囲気のある、二十五歳の栗田真帆(くりたまほ)さんは、思いついたように言うなり、自分のデスクをごそごそと探り出す。

彼女のファッションは清潔感と可愛らしさを兼ね備えたスカートスタイルで、民放の女子アナっぽい。

そんな彼女らに比べて、無難を売りにしようとしている私っていったい……。

若干へこみながら愛想笑いを貼りつけていると、真帆さんがネックレスを持ってこちらに戻ってきた。




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