王子様はハチミツ色の嘘をつく
涼子さんたちとの雑談を終えると、それぞれが自分のデスクに戻り、仕事に入った。
昨日教えられたとおりにメールチェックをしていると、もう二人の先輩も出勤してきて、私は簡単に挨拶にまわった。
その後も黙々とパソコンに向かい、お昼が近づいてくると、涼子さんから午後の会議の資料を渡されて、簡単に内容を頭に入れておくようにと言われたので、自分のデスクでめくってみる。
「“国産ハチミツ関連商品の取り扱い中止について”……え、国産って、人気じゃなかったっけ?」
議題を目にするなり、思わず声に出してしまう。
国産のハチミツは、その希少価値から値段は結構張るけれど、やっぱり外国産とは風味が違うからと、お客様に愛されている商品だったはず。
それを中止しちゃうなんて、ちょっと残念だな……。
グラフや表の並んだページをぱらぱら眺めてみると、その目的はどうやらコストダウンらしい。
無駄は省くってことか……美味しい国産ハチミツを売ることは無駄じゃないと思うけどな。まあ、きっと会社には会社の事情があるんだよね。
そんなことを思いながらざっと資料に目を通し終わると、それを見計らったかのように涼子さんが一緒に休憩を取ろうと誘ってくれて、二人連れ立って秘書課を出た。