俺の歌が届くまで
初めまして、家族です


俺は家族ってのを知らない。

気付いたら、誰もいなかった。母親、ってのも父親ってのも。


「満月、」


小さい頃、覚えてないけどオジサンにあたる人に引き取られたって聞いた。

それが今俺が「お父さん」って呼んでる人らしい。

「お父さん」は、いわゆる金持ちってやつで気まぐれに俺を拾ったんだと。

でも子供の面倒なんか見た事ないから、お金だけくれた。勝手にしてろって。

今もお金もらった。


「今日、帰ってくるの……何時?」

「遅くなる。先に食べて寝てなさい」


家は広いし、多分同級生からすると羨ましい生活をしてるんだとは思うけど

何だかいつも寒かった。


「行ってきます」


返事はない。だって、「お父さん」は忙しいから。

俺はそのまま中学校に向かった。

学校は賑やかで楽しい。特に、友達の双子は。


「よっ、みーつき」

「一緒に、帰ろう」


兄貴の零希(れき)が俺の背中を軽く押した。

弟の流希(るき)が俺の手を引いた。

……双子の名前が最近流行りのキラキラネームっぽいとよく思う。
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