Trick or Love?【短】
休日出勤をした今日、週明けに締切が迫っている業務を何とかこなした後で原口くんから「話がある」と資料室に呼び出された時は、仕事のことだとばかり思っていた。
と言うよりも、それ以外の話があるなんて考える余地もない関係だったはずだから、そう考えるのはごく当たり前のことだったのだ。
それなのに……。
資料室に入った途端に壁際に追いやられ、今はもう逃げる隙すらない状況に陥っている。
どこで何を間違えたらこうなるのか、なんてわからない。
そんなことを考えていると、原口くんは戸惑う私の心を惹き付けるように真っ直ぐな瞳を僅かに緩め、私の瞳を捕らえた。
「俺と付き合って」
真剣な声音で紡がれたのは、きっと本音なのだろう。
私に向けられた言葉を冗談だと疑う余地がなかったのは、真っ直ぐな視線が逸らされることがなかったから。
このひたむきな瞳で嘘をつくと言うのなら、何を信じればいいのかわからない。そう思えるほどの、真剣な表情だった。
資料室に入ってから随分と時間が経過した今、ようやく原口くんの目的を理解することができた。
だけど、彼の心情はまだ理解できない。
『どこに?』なんてお約束の台詞を吐いてしまったら、ただでは済まない気がする。
同僚とは言え、同じ部署で数年付き合っていれば相手の性格を多少は知っているし、何よりも今日は原口くんをいつもの彼だと思わない方が良いというのはわかる。
「理由、訊いてもいい?……あと、できれば少し離れて欲しいんだけど」
色々な疑問を纏めて一文にしてから控えめに切実な要望を伝えると、原口くんがにっこりと笑った。
と言うよりも、それ以外の話があるなんて考える余地もない関係だったはずだから、そう考えるのはごく当たり前のことだったのだ。
それなのに……。
資料室に入った途端に壁際に追いやられ、今はもう逃げる隙すらない状況に陥っている。
どこで何を間違えたらこうなるのか、なんてわからない。
そんなことを考えていると、原口くんは戸惑う私の心を惹き付けるように真っ直ぐな瞳を僅かに緩め、私の瞳を捕らえた。
「俺と付き合って」
真剣な声音で紡がれたのは、きっと本音なのだろう。
私に向けられた言葉を冗談だと疑う余地がなかったのは、真っ直ぐな視線が逸らされることがなかったから。
このひたむきな瞳で嘘をつくと言うのなら、何を信じればいいのかわからない。そう思えるほどの、真剣な表情だった。
資料室に入ってから随分と時間が経過した今、ようやく原口くんの目的を理解することができた。
だけど、彼の心情はまだ理解できない。
『どこに?』なんてお約束の台詞を吐いてしまったら、ただでは済まない気がする。
同僚とは言え、同じ部署で数年付き合っていれば相手の性格を多少は知っているし、何よりも今日は原口くんをいつもの彼だと思わない方が良いというのはわかる。
「理由、訊いてもいい?……あと、できれば少し離れて欲しいんだけど」
色々な疑問を纏めて一文にしてから控えめに切実な要望を伝えると、原口くんがにっこりと笑った。