土方歳三と運命の人~沖田総司と運命の駄犬 番外編~
歯がゆさ




数日後、俺は、梓を連れて、占い屋忠兵衛の所に来ていた。




以前、忠兵衛が来たときに、場所を記した紙を置いていったからだ。




久しぶりに見た占い屋は、何も変わりなく、人気の無い場所にポツリとあった。





忠兵衛が、俺と梓に気付き、にこやかに、部屋に招き入れた。




忠兵衛「来て頂けると思っておりました。」





梓は、ギュッと膝の上で手を握りしめている。





俺は、そっと、梓の手の上に自分の手を置いた。





土方「そんなに怯えなくても大丈夫だ・・・。」





梓「はい・・・。」





あれから、総司に、何か言われたのか、梓は、俺におなごの目はしなくなった。





忠兵衛「では、梓殿、振り返らず、平成の世に帰る事だけを考えて下さい。」




梓「はい・・・。あの・・・帰る前に、土方さんと少し二人にしてもらえませんか?」





忠兵衛「えぇ。それでは、隣におりますので、お呼び下さい。」






そう言って、忠兵衛は部屋を出た。





忠兵衛が、部屋を出るのを確認すると、梓は、俺の方に向き直った。






梓「土方さん・・・。色々とお世話になりました。ありがとうございました。」





何言ってんだよ・・・。




土方「礼を言わねぇといけねぇのは、俺の方だ・・・。梓・・・ありがとうな・・・。俺を信じて、こんな所まで来てくれて・・・。」




そう言うと、梓は、首を横に振った。





梓「私、土方さんを信じて、ここへ来て良かった・・・。大切な物がいっぱい出来ました。帰ったら、歴史、勉強しますね・・・っ。」




涙声の梓は、泣くのを必死に我慢していた。




土方「あぁ。ちゃんと勉強しろよ?正直、ここまで酷いと、卒業危ねぇぞ?」





梓「ギリギリ大丈夫ですから!」





土方「ギリギリかよ。『余裕』って言えるくらいにしとけ!」



そう言って、梓の頭に手をやると、梓は、俺に抱きついてきた。




梓「すみません・・・。最後の思い出に・・・っ。」





土方「っ!」




梓の温もりを感じて、俺は、頭が真っ白になった。





そして、俺も、いつの間にか、梓を抱きしめていた。




離したくねぇ・・・。





でも・・・。





俺は、未練がましい事を言った。





土方「お前は、きっと、時渡りをすれば、ここの記憶は無くなる。もし、運命が交わって、もう一度会えたら、その時は、お前に会いに行く。だから・・・。放課後に時間作れよ?」





俺が、平成で梓に総司の姿で言った言葉だ。





気休めだが、梓に暗示をかけた。




梓「もちろんです!・・・っ。」





ニコッと笑った梓に思わず唇を重ねてしまった。




お互いを求め合うように何度も何度も口付けた。





すると・・・。




梓の鼻からまた血が垂れた。





土方「オイッ!お前、またっ・・・。」




梓「あっ!」





梓は、鼻にまた、紙を詰め込んだ。





何なんだよ・・・。この別れ方・・・。




土方「ぷっ。くくくっ。お前、本当にお子ちゃまだな。」





梓「い、色気のある土方さんがいけないんです!」




俺は、梓の頬に触れた。





土方「達者でな・・・。」





梓「はいっ!土方さんもお元気で!」





そう言うと、梓は、ゆっくりと離れた。





腕の中の温もりが無くなり、俺は、手を握りしめた。






そして、梓は、扉を開けて、平成に帰った・・・。















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