貴公子?いいえ、俺様男です
次の日、里菜ちゃんはアトリエ シュウに来なかった。

この日は、フラワーアレンジ教室はなく、新商品の入荷もないため、忙しくはない。

彼女のロッカーを開けると、きちんと畳んだ店のエプロンと退職届けがあった。

"一身上の都合で退職します"と。

「上田さん、何か聞いてる?」

言われてみれば思い当たる、と話す上田さん。

俺のパリ進出の話が出てから、販売をやってくれる人を募集し採用した。

採用した二人に対し、里菜ちゃんは「私がいなくても大丈夫なように」細かな所までも教えていた。

「あれは、自分がいなくなっても困らないように…て、つもりだったのかも。
その時は、ずいぶんと丁寧に教えてるんだなって思ったの」

「辞める理由は何だろう?…上田さん」

「分からないわ。失恋した時は、頑張って来てたのに…」

「はっ?失恋した?いつ⁈ 」

「いつだったかしら〜?思い出せないけど、わりと最近だったと思うわ…て、今それ関係ないじゃない!」

「関係あるよっ!思い出して‼︎ 」

「先生、落ち着いて」




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