貴公子?いいえ、俺様男です

愛しい人

「リナ!そろそろランチにしよう」

職人仲間のヨハンだ。

「そうね。ヨハン、今行くわ」




ここは、ドイツ。ドレスデン地方は、マイセン発祥の地だ。

エルベ川の河畔に建ち並ぶバロック様式の建物は見事だし、ドレスデン城や大聖堂など美しい建造物でも有名だ。

一年半前、ツヴィンガー宮殿を見学し、マイセンのコレクションに感動していた私は、白磁に絵付けする職人さんに魅了され、今に至る。

元から細かい作業は好きだった私には向いていたようで、絵付けの勉強しながら簡単な仕事を任されるようになっていた。

歳も近いヨハンとは、感性も似ていて、意気投合した。

「リナ、明日の休みは、またツヴィンガー宮殿へ行くの?」

「ええ、そうよ。何回行っても飽きないわ」

「こうして毎日、白磁を見てるのに、休日まで見に行くなんてな」

「ふふふ…落ち着くのよ。白磁を見てると」



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