強引な次期社長に独り占めされてます!
「俺だよ俺」

え? 面と向かってオレオレ詐欺?

そうじゃない。頭が混乱しすぎて、私は何を考えているの?

「だから、俺だってば」

ガボッとライオンのマスクを外すと、高井さんの笑顔が出てきた。

「あ……こんばんは」

「こんばんは……松浦さんは、独特のテンポで話す人だよね」

笑顔が苦笑に変わった高井さんに、私も半笑いを返して取り上げられたグラスを見る。

「お酒だったんですね」

「うん。ソフトドリンクはあっちのテーブルに置いてあるよ。君はあまり飲まないでしょ? この間の食事の時も飲まなかったし」

「まぁ、そうなんで……」

……すけど。私が私ってバレた!?

「高井さん、私だってわかりましたか?」

高井さんはキョトンとして、ライオンマスクをかぶり直すと軽く頷いた。

「松浦さん、マニキュア塗ってないし。だいたいの子は塗ってるし。それにうちの会社は女子少ないし。一瞬わからなかったけど、君ってここに小さなホクロあるし?」

耳を指差されて、愕然とした。

な、なんて細かいところまで見ているんだ、高井さん!
そんな些細な事、女子だって普通に見落とすよ!

あれ、見落とさないのかな?

私って、あまり人のことジロジロ見ないから、どっちだろう?
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