強引な次期社長に独り占めされてます!
「冗談も同情も結構なんですけど」

頬を膨らませて呟くと、主任に驚いた顔をされた。

「冗談は言われても仕方ないと思うが、どっから同情が湧いて出た?」

湧いて出たわけじゃないんだけど……。

目についたワイングラスを手に取って、ひとくち飲んでから主任を見据える。

「男の人はみんな綺麗な人とか、可愛い子が好みじゃないですか。私みたいなブスは、見向きもされないことはわかってます」

「お前もかなりの偏見だぞ、それ」

困ったように身を正す主任を眺めながら、ワイングラスを傾けた。

ほんのりとピンクの飲み物は、思っていたより甘いお酒。

コクコク飲んでいたら、何かに気が付いた主任の手が慌てたように私の手を掴む。

「待て。それ以上は飲むな。お前また空きっ腹に酒飲んでるだろ」

「素面ではお話しできるようなことじゃありません」

「いや。もう、何となくわかったから、とにかく落ち着け」

落ち着いていますとも。落ち着いているから素面じゃやってられないんじゃないか。

「からかうのはよしてください」

「からかってないだろ。少なくとも、お前と高井が一緒にいるのを見てイラッとするくらいは本気だぞ?」

「男の人の本気なんて信じられないもん。ちゃんと好きになってくれたのかな、と思ってたのに、実は“男がいなくて可哀想だから”付き合ってくれていたなんて思ってもみなかったもん」

「あー……だいたい察した。そりゃ相手の男も男だが、お前もちゃんと男を見る目を養え」

「どうやって養うんですか。そもそも近づきもしないですよ」
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