強引な次期社長に独り占めされてます!
「……いえ。土曜日は忙しいです」

暇だけど、そんなことも別に言わなくっていいんだよね?

「そうか」

あっさり頷かれて眉を寄せる。

何だろう。今の会話になんの意味があるわけでしょう。

主任が手をよけてくれたから前髪をパパッと直すと、また窓の外を向く。

景色が流れて、車が動き出した。

カーラジオをつけるでもなく、無言になった車内。微かなエンジン音と、タイヤがアスファルトを噛む音が響く。

この車、とても静かだ。そんなことに気がついたのは、私の住むマンションが見えてきた時だった。

「この辺りか?」

主任が落ち着いた声音で微笑む。

「はい。あそこのマンションです」

そう言ったら、マンションの前で車を停めてくれた。

「今日は……ありがとうございます」

シートベルトを外し、ドアを開けかけて主任を振り返る。

「ああ。それは別にいい。松浦」

「はい?」

「今週の土曜日。10時に迎えに来る。それなりの格好をして待っていろ」

はい?

「なんの事ですか?」

「デートだ松浦。しっかりデートらしい服装で来い」

「私、土曜日は忙しいと申し上げましたよね?」

主任は晴れやかな笑顔になり身を乗り出すと、ドアを開けようとしていた私の手を掴む。

「いい大人同士なんだから、このままドライブデートでもいいな」

「良くないですっ! いきなりなんですか? 主任がそんなことを言い始めるなんて……」

「教育的指導?」

それはずいぶん堅いイメージのフレーズに聞こえますが?
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