オフィス・ラブ #0


「ね、つきあっちゃおうよ」



ゼミの彼女とは、その後も何度か会って、そのたび向こうの部屋で抱きあっていた。

珍しく昼間から呼び出された今日、あ、来たな、と思った。


何度か関係すると、たいてい言われるこの言葉には、いったいどういう意味があるんだろうと毎回思う。


たまに会って、気ままに寝て。

することは変わらないのに「つきあう」のに同意したとたん、それは義務に変わる。


会わないと怒る。

抱かないと疑われ、抱くばかりでもすねられる。


自分だって別に、それだけが目的なわけではないけれど。

それがないなら、正直ひとりで車を転がすほうが楽しいし、安らぎもする。


女の子は可愛いと思うし、柔らかくて綺麗なものがそばにいるのは、悪くない。

だけど、それだけだ。


つきあう、ということに、何を求めたらいいのかわからず。

何を求められているのかは薄々わかっていながらも、たぶんそれは自分には向かないのだと、そう思うようになっていた。


けれど、何度か関係を持てば、それなりに愛着もわいてくるもので。

そうだな、と答えるのが、この時は一番楽だった。



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