砂糖菓子より甘い恋1

一の三 初めての笛の音

「姫様、朝餉の支度が整いました」

女房の楓(かえで)の言葉に瞳をあける。
ここのところいつも、囁くような怖い言葉に眠りを妨げられていた毬は、ここちよく目が覚めた自分に驚いていた。

「いつも早起きなのに、今朝は珍しいですね」
言いながら楓が部屋に入ってくる。

何時もなら、太陽が昇り始める頃には、少年の格好で京の町を走っている毬だが、今朝は眩しい光に目を細める。

「夕べはまた、どこに行かれていたのですか?」
身支度を手伝いながら、楓が問う。

毬は牛車であったことを思い出した。
初めて逢った、都で有名な呪術師は、綺麗な顔に澄んだ声をしていて、知的でとても優しかった。

でも、楓に上手く説明出来ない。

しかし、答えなど待ってはいないようで、一方的に話を続ける。

「姫様もお会いになればよかったのに。
龍星様は噂に違わぬ見目麗しき素敵な方でしたのよ〜」

楓の声は高ぶっていて、彼女がどれだけ龍星に心奪われたか手にとるように伝わってきた。


だから、そんな龍星に抱きしめられたなんて言ったら彼女を落胆させそうで、毬は何も言えなかった。
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